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ノンフィクション系の本 今年読んで面白かったまとめ

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ノンフィクション作品、定番の名作から最新の話題作まで

優れたノンフィクション本は情報量が凄い

今年は例年に無くノンフィクションを読んだ気がする。ノンフィクションものは、やはり情報量の多さという点では小説や批評といったほかのジャンルよりも優れている。面白いノンフィクションほど作家の手間ひまがかけられているし、読んでいて入り込める作品が多い。

こちらでは、国内・海外から6冊のノンフィクション作品をご紹介します。最近の作品が多めですが、少し古めのノンフィクションのベストセラーのようなおすすめ本も入れています。

 

おすすめのノンフィクション 6冊

「ペルソナ―三島由紀夫伝」 猪瀬直樹

「ペルソナ―三島由紀夫伝」 猪瀬直樹

 

今年は猪瀬直樹が色々あった年だった。個人的には政治家はどんな事をしようが民衆を正しい方向に導けばそれでOKだと思っているので、優秀な実務家である猪瀬が政治の世界から去ってしまったのは残念だ。元々猪瀬直樹の政治との関わりは小泉政権時代に道路公団の民営化を進めたのが始まりで、そこから都知事になるまで一貫して「形骸化した官僚機構」を立て直し役所に規律をもたらす事をやり続けている。

この「ペルソナ 三島由紀夫伝」は代々官僚であった三島の父方の家系に着目し、三島自身の来歴と作品を参照しながら、戦前から戦後に至る日本の知られざる一面をえぐり出す。世の三島研究本の多くは母方の雅の世界に注目しているものがほとんどで、実際一見するとその方が三島の小説に結びつけやすい。

しかし「ペルソナ」の前半で猪瀬は、三島の祖父で樺太庁長官に上り詰めながらも時代の争乱の中で失脚した平岡定太郎を話の中心に据えている。この本は三島由紀夫の生涯を極めて詳細に描写しながらも、そこに自然と浮かび上がってくるのは滑稽かつ奇妙な戦後の日本の姿である。定太郎と三島の人生を比較し、「官僚」という視点から戦後の日本を描写した秀逸なノンフィクションに仕上がっている。

 

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」 増田俊也 

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」 増田俊也 <

「まだ読んでない人がうらやましい!」そんな気持ちにすらなるノンフィクションの圧倒的傑作。

僕自身は格闘技にはあまり興味のある方ではなく、力道山のこともほとんど知らなかったし木村政彦に関してはその名前すら聞いた事が無かった。この本は水道橋博士がラジオで大絶賛していて、「格闘技の歴史を超えて、日本の戦後史を物語っている」とまで言っていて、全くその通りの名著だと思う。

木村政彦は、多くの人がそう認める最強の柔道家である。柔道家として順当なキャリアを積んでいたものの、太平洋戦争を境に運命が一転。木村は生活費を稼ぐ為にプロレスの世界へ入るが、そこで力道山と出会う事で思わぬ事態に巻き込まれていく。

この本は、格闘技に興味の無い人にこそ読んでほしい。僕自身、これを読んで柔道をはじめとした格闘技の見方が大きく変わった。ただ「格闘技」っていいなとか思うようになったのでは無く、そこに渦巻いている黒い欲望や、利権の構造もわかるようになり、より重層的な見方が出来るようになった。著者の木村に対する情熱のほとばしりが凄まじく、読んでいてにやにや来たり泣きそうになってしまったりする。

 

「あんぽん 孫正義伝」 佐野眞一

「あんぽん 孫正義伝」 佐野眞一

成功した経営者やスポーツマン自身が書いた「こうやって成功しました」系の本は、全く読む意味が無いと思っている。

そもそも企業家の本はあまり読む機会が無かったのだが、今年これが文庫化されていたので手に取ってみた。まず、序盤の村上龍小説のようなグロテスクとも言える程の描写がすごい。何かって、孫が幼少期を過ごした場所、鳥栖の朝鮮人集落である。全く素朴な感想になってしまうが、こんな所から現在のソフトバンクの様な世界企業を作り上げたというのは本当に凄い事だ。

孫正義、スティーブ・ジョブズ、この日米二人の企業家に共通している現象は、「故郷の喪失」である。孫は幼少期から現在に至るまで差別にさらされ、ルーツである韓国の大邱も故郷と呼べる場所では無い。ジョブズも私生児として生まれ、実の親を憎み面会を拒み続けた人物だ。最近経産省の主導で「第二のジョブズをつくろう」とかやっているようだが、こういう企業家というのは頭の良し悪しとか負けん気とかでは無く、その出自からして特殊である必要があるんじゃないだろうか。

 

「欲望のメディア」 猪瀬直樹

「欲望のメディア」 猪瀬直樹

再び猪瀬本。こちらは「ペルソナ」よりもさらに古く、これと「ミカドの肖像」、「土地の神話」を含めた「ミカド三部作」は日本のノンフィクションの歴史に残るクラシックとして知られている。ちなみに僕はその3冊のリーダー的存在である「ミカドの肖像」がまだ入手出来ずに未読である。

猪瀬直樹のすごいところは、表面的な「出来事」や「現象」からは距離を置き、それが人々の無意識にどう働きかけて、間接的に何をもたらしたかという事を極めて的確に示している所だ。「欲望のメディア」では、現在マスゴミ扱いされながらも依然としてネットとは比べ物にならないほどの影響力を持つ「テレビ」の成立過程を、詳細なディテールを突き詰めて描いている。ちなみに上記の「木村政彦はなぜ」とあわせて読むとめちゃくちゃ面白いです。

 

「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」 スティーブン・レヴィ

「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」 スティーブン・レヴィ

数あるグーグル本の中でも、現場にしっかり踏み込んで、当事者のインタビューも多数盛り込んで最も詳細に書かれているのがこの本だと思う。

グーグルがどういう考え方のもとで出来ているのかがよく分かる。一番驚いたのは、創業者の二人であるラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンが最後まで研究者になることにこだわっていたという点だ。ここから僕が思ったのは、やっぱり検索エンジンとしてグーグルが一人勝ちしたのは、「企業家マインド」ではなく「研究者マインド」がその根底にあったからなのでは無いかということだ。

ネット検索では基本的に、自分の外側にある知識は入ってこない。現在持っている知識の補強材料しか見つからないのだ。大学の研究とは、基本的にそういうものなのでは無いかと思う。そして、出来るだけ効率的にその補強材料を得て、知識を強固にくみ上げていくことで画期的な研究成果が生まれる。

あと興味深かったのは、ラリーもサーゲイもモンテッソーリ教育を受けて育ったという点と、CEOを選ぶ時に「全員ダメだけど、しいていえばジョブズならいいんじゃない」と言ったというエピソードだ。

 

「HHhH (プラハ、1942年)」 ローラン・ビネ

HHhH (プラハ、1942年) ローラン・ビネ

今年の初めに読んだ。今から思えば、これを読んだ事がきっかけでノンフィクションに気持ちがかなり傾いたのかもしれない。

この本は第二次世界大戦中、ナチに支配されたプラハを舞台に、統治責任者であるハイドリヒを暗殺する「類人猿作戦(エンスライポイド作戦)」のドキュメントである。どこまでも事実を忠実に再現しようという著者の熱意があるポイントで沸騰し、ノンフィクションを超えて「過去を語るって一体なんだ?」みたいな哲学的とも言える程の問いかけに到達してくる。

なんとこの本は、ノンフィクションでありながらメタフィクション的な構造になっている。取材の過程も、ある種ノンフィクションタッチで客観的に描写されているのだ。そして、その部分が本筋であるハイドリヒや決死隊たちの物語をより生き生きとしたものに蘇らせているという、奇跡のような成果に結びついている。

「1000ページ読んで1ページ書く」と言う程の圧倒的なディテールと、その誠実すぎる程の著者の姿勢に、そして勿論ノンフィクションとしての面白さにも、必ず胸を打たれる名著だ。

 

 

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