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2017年に観た映画 おすすめランキングベスト30

2017/12/07 (更新日:)

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今年観た映画、面白かったおすすめの30本をごそっとまとめてご紹介!

傑作大量!おすすめの映画をあらすじ・解説つきでランキング 

今年も残りわずか。ということで恒例の映画ランキングいっちゃいます!

毎年思うことではあるけど、今年も面白い映画がホントに多かった!どうでも良い映画は記憶から消えてるというのもあるかもしれないけど、ここで紹介する30本はどれも全部面白かったです。

特に上位15本に関しては大好きで、トップ5本については特別な思い入れも出来ました。順位はせっかくだからということで付けたけど、全部1位にしてもいいくらい素晴らしかった。

簡単なあらすじと、自分なりの感想を付記しているので、是非気になる作品を見つけてみて下さい。

※参考記事

2015年上半期に観た映画ランキング おすすめベスト15

2015年に観た映画ランキング おすすめベスト40 

感動できる深い映画27作品を感想付きでご紹介します

劇場公開作中心 + 新作レンタルで観た作品からチョイスしました 

一部AmazonビデオやDVDで観た新作もありますが、ほぼすべて劇場で鑑賞しました。だいたい2016年末〜2017年12月頭に観たものから選んでいます。

基本的にネタバレはしていませんが、映画の内容をある程度書いてはいるので、全く白紙の状態で観たいという方はご注意下さい。

総文字数1万3千字!ではどうぞ!!

 

もくじ

30位〜21位

20位〜11位

10位〜1位

 

30位〜21位

30位 : ダンケルク

「俺達のノーラン」ことクリストファー・ノーラン監督の戦争映画。第二次大戦初期、ダンケルク海岸での壮絶な撤退戦の様子を緊迫感たっぷりに描く。

トリッキーな時間演出を戦争という極限状況に符合させていくというノーランらしい志の高い映画である一方、劇映画としてまとめるための取ってつけた感が否めなかった。ただ戦闘機や戦艦のリアルさなどは相変わらずすごくて、そこだけでも見る価値は十分あったと思う。

 

29位 : メアリと魔女の花

11歳の少女メアリがひょんなことから魔女の世界に入り込み、その中にいた悪いやつをやっつけるために頑張るみたいな話。監督はジブリでアリエッティやマーニーを監督した米林宏昌。

魔女の国の主要な舞台である「エンドア大学」の細密かつ豪華なアニメーションや、水や光の描き方が本当に素晴らしい。お話としての結論はあまりに凡庸かつ思考停止的なエコメッセージで僕は全く共感できなかったんだけど、その一方で観るものに文字通り「魔法をかける」アニメーションとしてはさすが堂々たるものだと感じた。

 

28位 : ゲットアウト

2017年、アメリカで最も儲けたといわれるホラー映画。黒人のカメラマン・クリスが白人の彼女の実家にご挨拶に行くことに。「俺黒人だけど大丈夫かな?」と心配なクリスだが彼女は「父はオバマ支持者よ(キリッ☆)」と問題なさげ。でも実際にいってみたら案の定ヤバイことが起きまくってまじヤバイという話。

人種差別という、社会的に最も大きくかつデリケートなテーマをほとんどギャグのようにホラー化しつつも、そういう描き方でしか表せないようなメッセージをきちんと形成している。前半と後半で大きく作品のトーンが変わる放り投げ感という意味でロバート・ロドリゲス監督・タランティーノ脚本の「フロム・ダスク・ティル・ドーン」なんかも思い出す作品。

 

27位 : アウトレイジ最終章

北野武による「アウトレイジ」3部作の最終章。

結論だけ言ってしまうと1→2→3の順に尻すぼみになってしまった感は否めなくてちょっと残念な感じはする。

 

26位 : 3度目の殺人

日本を代表する映画作家として不動の地位を築きつつある是枝裕和監督が挑んだミステリー/サスペンス。福山雅治演じる弁護士・重盛が役所広司演じる殺人犯、三隅を弁護することに。わけの分からない応対を繰り返す三隅にイラつく重盛だが、いろいろ調べていくとある事実にたどり着いていく。

これまでの是枝作品から大きくテーマが変わっており、最初はかなり面食らった。人が人を罰するとはどういうことかを、三隅という特異なキャラクターを仕掛けとして問題提起している。僕は一度観ただけで、たぶん未だに理解できていないところもかなりあると思うので、例によって数年後見返した後に評価爆上がりの可能性がかなり高い一本。

 

25位 : ハクソーリッジ

メル・ギブソンの監督復活第一作。軍隊に入ったけど宗教的な理由で人を殺したくはないんですという男が主人公で、沖縄戦の前田高地=ハクソーリッジを舞台に凄まじい残虐描写が繰り広げられる。

上記の残酷描写や作品のテーマ性はメルギブらしさがしっかり出ていて、全体の完成度は全く文句の付け所がないと思う。ただ幾多のトラブルを乗り越えての復帰作というだけあってちょっと余所行き感も無くはなかった。次はもっと濃い〜やつ期待してます。

 

25位 : ブレードランナー2049

映画史のみならず哲学・文芸批評のなかでもたびたび言及され、現実のポップカルチャーにも多大すぎるほどの影響を及ぼした82年公開の「ブレードランナー」の続編。※参考図書 : 町山智浩「ブレードランナーの未来世紀」

監督のドゥ二・ヴィルヌーヴ(キーボード打ちづらい!)らしさが出ていて良かったし、鮮烈な映像演出もしっかりあって満足できた。もちろん気になるところはたくさんあって、特にハリソン・フォードのやる気の無さが目に余った。EP7の時は良かったのにねえ。

 

24位 : サバイバルファミリー

「ウォーターボーイズ」や「WOOD JOB!」の矢口史靖監督作品。ある日突然、日本中のありとあらゆる電気製品が動かなくなる。テレビも自動車もスマホも動かない。絆ゼロでバラバラだった鈴木家は生き延びるために自転車で祖父母の住む鹿児島を目指すが・・みたいなあらすじ。

矢口監督だしそこそこ期待して観に行ったら、本当にめっちゃおもしろかった。特に鈴木家のキャストひとりひとりが本当にイキイキと演技していて楽しいし泣ける。

 

23位 : マリアンヌ

ロバート・ゼメキス監督、ブラッド・ピット主演。舞台は第二次大戦中。主人公はカナダ人工作員のマックスで、フランス人工作員のマリアンヌと出会い結婚する。しかし突然妻に対してかけられた重大な嫌疑。彼女の潔白を証明するために奔走するマックスだが・・

いやーしかし最近のゼメキス、「フライト」「ザ・ウォーク」と来てこれでしょ。あまり話題になってるのかわからないけど、どれも凄すぎるほどの貫禄が出てるよね。

本作については「全ての恋愛は戦争である」みたいな命題を体現した、正統な文芸映画に仕上がっている。原題はAllied(=同盟)。まさに約束とは何か、嘘とは何か、友と敵の境界とは何かといった事を大きなスケールで描き切り、1人の男の悲哀に集約させた手腕は本当に凄い。

 

22位 : バリー・シール アメリカをはめた男

70〜80年代の実話をもとにした政治・犯罪モノ。主演はトム・クルーズ。

主人公のバリー・シールは凄腕のパイロットで、その技術を買われてCIAの極秘任務を担当することに。しかしひょんなことから中南米の薬物密輸にも加わることになる。莫大な金を手にしていくバリーだが・・といったあらすじ。

当時のディスコ・ファンクが軽薄かつポップに流れまくる楽しい映画。脇汗出しまくりで操縦桿を握るトムに萌える。

 

21位 : SING/シング

超豪華な声優と音楽が話題となったCGアニメ作品。あらすじはざっくりこんな感じ。コアラのバスターは伝統ある劇場のオーナー。でも最近全然客が来なくて潰れそう。「そうだ、歌のコンテストをやって盛り上げよう!」と思いついて意気揚々とオーディションを開催するが・・

こう言ってはなんだがストーリーはほぼどうでも良い。とにかく「アニメキャラが歌う」ということの快楽を浴びるように享受できるという点に置いて「シング」はかなり突き抜けていて、その振り切りっぷりが本当に気持ち良い。

アニメーションの画期となった「蒸気船ウィリー」にしても、絵と声のシンクロによってアニメ独自の異様なリアリズムを生み出していたわけで、本作ではまさにそれを追求しつつ誰もが知っている歌手や楽曲をキッチュなCGの動物に歌わせるというやり方を取ることによって、結果的には新しい角度から現実とアニメの境界撹乱を図るに至っている。なんていう深読みが出来るくらいしっかり作られているし、そんな難しいことを何も考えなくても一家全員で心から楽しめる凄く良いアニメ作品。

 

20位〜11位

20位 : 22年目の告白 私が殺人犯です

2012年の韓国映画「殺人の告白」をリメイクしたサスペンス・スリラー。「サイタマノラッパー」シリーズの入江悠監督。入江監督がついにメジャーでもこんな作品を作ってくれた!と嬉しくなる素晴らしい出来栄えだった。

かなり大胆な筋書きではあって、観終わったあと普通に考えたらおかしいような所も少なくない。ただやっぱり2時間ずっと面白く観られるし、絶対観て損はしないんじゃないかなと思うよ。

2017年の現在と1995年の往還を映像の質感演出で表現している所も仕事が細かい。あとワイドショーやSNSほか、ネット動画独特のインターフェースが現実世界の心象に大きな影響を受ける「事件」というものをちゃんと描き出しているところも今観る作品としてとても意味があると思った。音楽も格好良い。

 

19位 : ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス

スタートレック、スターウォーズといった宇宙SF・スペースオペラの歴史をまた1つ更新し世界中の映画ファンを魅了した「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のシリーズ2作目。大きな期待を持って迎えられた続編も素晴らしい出来だった。劇場で観るとてきめんに分かるんだけど、とにかく映像が綺麗だこと!それもそのはず。最新の8Kカメラ「8K WEAPON」で初めて撮影された作品らしい。エゴが住んでる星とか凄かったね。

あとまあ各所で言われていることをあえて繰り返させてもらうと、この邦題には猛省を促したいですね。いまからでも遅くないからブルーレイ再販のタイミングとかで普通に「VOL.2」とかにしてほしいよ。ほんと嫌になる。

 

18位 : ジョン・ウィック:チャプター2

こちらもヒットしたやつのパート2。強すぎて笑えてくることで有名な殺し屋のジョン・ウィックさんが前作に輪をかけた暴れっぷりを見せてくれる。主演はもちろんキアヌ・リーブス。敵対する殺し屋役でラッパーのコモン、謎の伝道師役で「マトリックス」以来キアヌとの共演となるローレンス・フィッシュバーンも登場。

これでもかというガンアクションの応酬がひたすら続く2時間。はっきり言ってストーリーとかは重要じゃなくて、ただ目の前の肉体たちの躍動に圧倒される。前作と比較して際立っているのがロケやセットの美しさ。前半のローマの城みたいなやつ、後半のミラーハウスみたいなやつは共に名シーンだと思う。

 

17位 : ラ・ラ・ランド

アカデミー賞最有力!と言われながら取れなくて、授賞式では嫌がらせのようなミスも発生して話題となってしまったミュージカル映画。売れないピアニストと売れない女優が未来を夢見ながら歌って踊るなんともお気楽な世界観の映画。「セッション」で強烈な印象を残した若手監督デミアン・チャゼルが、気持ち良いほど何のてらいも無く「アカデミー賞行きまっせー」という意気込み十分で作り上げた感100%という神経の図太さも大きなポイントだ。

とか言うと嫌味くさいんだけど、まあでもさ、そう言いたくなるほどよく出来てんだこれが。とりあえずオープニングがやっぱり凄くて、あと「サンセット大通り」とか「ニューヨーク・ニューヨーク」なんかへの目配せがあったりして、適度に深みを持たせているとこも憎いよね。

 

16位 : メッセージ

ある日突然、地球上の各所に謎の宇宙船が到来。何しに来たのか目的も何も分からない。言語学者のルイーズは彼らとの意思疎通を図ろうと試行錯誤を重ねる。その結果宇宙人の言語を習得してしまったルイーズに思わぬことが・・みたいな映画。

テッド・チャンの原作がSFの金字塔と言われていて、「あれを映像化するってどうやって??」っていう感じだったんだけど見事に2時間の映画に仕立て上げた労作だ。「未知の次元に触れることによって宇宙(アウタースペース)と同時に世界観(インナースペース)も期せずして開ける」という構造は「コンタクト」「インターステラー」にも通底する。

 

15位 : 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

主人公のデイヴィスはNYの金融機関に勤める男。金持ちだけど日々数字を操作するだけの毎日で人間らしい感情や現実感を失っている。そしてある日突然妻が交通事故で死去。愛する人の死に対して涙すら出ないデイヴィス。いや、俺は妻を愛してさえいなかったのか?自身の異常さを自覚した彼が取ったまさかの行動とは・・

というあらすじを聞いただけで凄く期待してしまって観たんだけど、ほぼその期待通りの名作だった。人は今の感情や思いだけを現実だと信じてしまうけど、それを疑うという難儀によってこそ本来の自分を、あえて手垢の付きまくった言葉で言うと「人間らしさ」を、取り戻していけるのだ。

監督はジャン=マルク・ヴァレ。「ダラスバイヤーズクラブ」「わたしに会うまでの1600キロ」と来てこれっていう圧巻のフィルモグラフィ。全て一貫したこだわりを感じるし、全て傑作じゃないか。なんかあまりにも過小評価じゃないか??どうなんだろ。

 

14位 : モアナと伝説の海

ディズニーアニメ56作目。ハワイらへんの海を舞台に、村長の娘モアナが島を救うために冒険に出るみたいないつもの感じ。

ディズニーの近作では「ベイマックス」がいまいちで「ズートピア」に関しては全くつまらない上にやや問題含みの内容だった(というよりもズートピアを持ち上げている人たちの残念さがキツかった)ので個人的にかなり身構えて劇場に臨んだ。だけど「モアナ」に関しては特にアニメーション表現で非常に意欲的かつ高度な試みが見られ、本当に素晴らしかった。やっぱりディズニーはすごい。

具体的に言うと3Dが当たり前になった時代における2Dアニメの活かし方みたいな話で、マウイのタトゥーや深海のネオン表現が印象的なミュージカルシーンではそれが意識されていることは間違いない。監督の二人は2009年の「プリンセスと魔法のキス」以来のタッグだそうで、その実績を踏まえた完璧な仕事になったのでは。「プリンセスと〜」は批評家の評価は高かったけど商業的には失敗で、それでも後々からこんな風に生きてくる訳だから何事にも一生懸命に取り組むのが大事だよなと思わされる。

 

13位 : ワンダーウーマン

バットマン、スーパーマンと同じ世界観という設定の「DCエクステンデッドユニバース」の4作目。超絶女戦士・ワンダーウーマンの来歴の秘密を描き出す。主演のガル・ガドットさんが上映時間中ずっと輝き続けている。DCEUの過去三作がいずれも大変残念な仕上がりだっただけに、ワンダーウーマンの成功には多くの映画・アメコミファンが喜んだ、というよりも安心したんじゃないかと思う。

最近の大作映画の傾向として、敢えてあからさまにCGくささを出してほとんどアニメの中にぽつんと生身の人間がいるかのような見せ方をするというのがあると思う。ワンダーウーマンはその典型で、前半のアマゾンの世界なんてゲーム画面見てるみたいだったし、クライマックスの能力開花のところなんてほとんどヤケクソで笑ってしまう。いや、そこが素晴らしいんだけどね。

ちょっと付け足すとそのわざとCGくさくする系のある種の反動としてジョンウィックやジャックリーチャーみたいな生身の筋肉で頑張る系の路線がウケていたりして、そういう軸で観るとなかなかおもしろいと思うんだけどどうですかね。

 

12位 : ベイビードライバー

天才的な運転技術で強盗を手助けする「逃がし屋」のベイビー(ベイビーという名前の男の子)。組織とのいざこざからベイビーの恋人や家族が問題に巻き込まれ始めていく。

この映画の最大の特徴は音楽。使われている楽曲がどれも最高なんだけどそれだけじゃなくて、銃撃や犯罪のシーンでは映像と音楽のテンポが完璧に合わせられている。

 

11位 : ナイスガイズ!

舞台は70年代のLA。探偵のマーチと示談屋のヒーリーはある事件への関与をきっかけに、思いもよらない巨大な陰謀に巻き込まれていく。

と、あらすじだけ言うとなんとも重そうな感じがするけど全然そうじゃないのが本作の大きな魅力。洋画を観てここまで笑うことは無いんじゃないこと思うほど爆笑するシーンが沢山ある。あまりに簡単に人が死んでいったりするしなんとも不謹慎な印象も受けるが、それ全体が映画のタイトルでもある「ナイスガイズ=いい奴ら」というテーマに結実していく見事な作り。

今年は傑作が多くてベスト10に入れられなくて申し訳ないような作品もあるけど、「ナイスガイズ」に関しては向こうから「おれらは順位やら名誉なんてクソ食らえだよ!」とか言ってくれてるような気がするので11位にさせていただきます。

10位〜1位

10位 : 美しい星

2017年、日本映画界最大の悪ふざけ。こんなものをシネコンで毎日何回も上映出来るんだから、日本もなかなか悪くないじゃないかと思えた。 

 

9位 : エル ELLE

あらすじはだいぶ過激なのであまり書きたくない。簡単に言うと主人公の女性がひたすらひどい目にあい続ける映画。監督は「ロボコップ」などで有名なポール・バーホーベン。世の中の欺瞞に対して敏感なバーホーベンらしい作品で、映画それ自体にはもちろんの事、彼の誠実さに対しても同時に感動してしまう。

いろいろな読解が可能だとは思うけど、僕が思ったのはこんな感じ。「暴力を伴わない関係性など無い」というのが人間社会の基本であって、それに鈍感だったり目を背けているやつに限って無意識に人を傷つけたり、衝動をコントロール出来なくなってしまう。主人公のミシェルは殴られて血を流す生身の人間であり、当然暴力を受けたくないと思っているが、暴力を介して得られる関係性そのものを決して否定せず真っ向から受け止める。もちろん現実にはミシェルみたいな人はいないんだけど、それを1人のキャラクターとして描けるところに映画を始めとする物語の意味があるんだよね。

 

8位 : ドント・ブリーズ

舞台は荒廃した街・デトロイト。荒れすぎていて警察が少ない街だ。そんなデトロイトで、若者3人組が強盗目的で民家へと忍び込む。なんでも住人は大金を隠しているものの盲目の老人らしくてかなり楽勝っぽい。と思って侵入してみたら老人は元軍人な上にフクロウのように鋭敏な聴覚を持っており、それを頼りに若者たちを逃すまいと次々に攻撃を仕掛けてくる。ため息一つついても相手に気づかれてしまうこの家から、一体どうやって逃げ出すのか・・

かなり怖いという事を別とすれば、とにかくメッチャ面白いので、今から90分間余程重要な用事がない限り、Amazonビデオですぐに観ることをおすすめする「怖い」「気持ちわるい」という感想はあるだろうけど、「つまらない」という事がまず無いだろうと思えた作品があるとすれば2017年はドントブリーズだったかなと思う。

 

7位 : ムーンライト

大本命の「ララランド」を抑えて2017年のアカデミー作品賞をかっさらったのがこちら。まあ観たら納得で、これには文句つけられない。

映像が見たこと無いような不思議な感じで、調べてみたらやっぱりかなり特殊な処理をして仕上げているらしい。3部構成のそれぞれでベースの色を変えていたりしてるらしくて、映画における映像処理技術のあり方もかなり変わってきていると思わされる。個人的にはど頭のフアンの乗るスカイブルーの車の色味に心を持っていかれてそのまま最後まで行ってしまった。あのファーストカットは何気に凄いと思う。

LGBT云々は作品の本質では無くて、どちらかと言うと「男という生き物の悲しさ」みたいなことを言っている映画なんじゃないかな。主人公はたまたまゲイで黒人という、アメリカの田舎ではどうしても不利にならざるを得ない条件を持っている。人種や性的指向という大きな属性でなくとも、誰しも何がしかの弱さみたいなものは当然あって、それを克服するためには「男らしく」なるしかないのだ・・ドーン!みたいな感じで来る堂々たる文芸映画。

「じゃあこれ女性には関係ない映画なの」ってことになるけどそれも違っていて、「男」と「男らしさ」って全然別なのであって、女性もある組織の中で頑張っていこうとするとその「男らしさ」という鎧に身を包むしか無い局面もあるわけで、その意味で実に普遍的なテーマを打ち出していると思う。

 

6位 : マンチェスター・バイ・ザ・シー

これ観て泣けないやつは「雨の日は会えない〜」の主人公みたいに心が腐っている!とまでは言わないけれど、今回のラインナップで一番泣けるのが本作。

主人公のリーは短気で陰気な一匹狼。ある日、兄が心臓発作で亡くなってしまう。遺言により兄の息子 = 甥っ子であるジョーの後見人となってしまう。実は壮絶な過去を持っていてそのせいで暗い性格になってしまったリーなのだが、果たしてジョーと家族として向き合えるのか。という話。

マンチェスター・バイ・ザ・シーというのは町の名前で、人口5000人ちょっとの海辺の景勝地。のどかな町並みが、徐々に打ち解けていくジョーとリーを優しく見守る。家族とは自分にとって大切な人の事だけど、目の前のよく知らない人を大切に思うためには一体どうすれば良いのだろうか。必至に自分の過去と向き合うリーの姿に胸を打たれる。

 

5位 : エブリバディ・ウォンツ・サム!!

主人公のジェイクはこれから大学生になる野球部員の男の子。野球部員たちの暮らす寮に入るところから大学入学初日までの4日間を描くという映画。恋やパーティーに明け暮れる毎日と、「今から人生最良のときが始まるんだ!」というこれ以上無いワクワク感を最高に楽しく見せてくれる。

監督はリチャード・リンクレイター。過去作「ビフォア・サンライズ」や「6才のボクが大人になるまで」から続くテーマをここでも追求していて、一言でいうとそれは人生における時間の感覚の不思議さ、未来への期待と過去への後悔みたいなものかと思う。

本作はまさに「6ボク」のラスト直後からはじまる続編とも言って良い内容で、主人公は未来に開かれた無限の可能性に胸をときめかせている。かといって決して軽薄な映画ではもちろんなくて、そんな楽しいひとときがいつか確実に終わってしまうという不穏さも痛々しく描いていたりもする。

主人公のジェイクやその仲間たちは超リア充にしてパリピなのであって普通に考えたら共感しにくいんだけど、それでも彼らにある種自分を重ねてしまうのは、かつて自分が未来に対して抱いていた希望とその果ての「終わり」のようなものを見出してしまうからだろう。

 

4位 : 散歩する侵略者

いよいよ円熟味を増してきた黒沢清監督のSF・ミステリー作品。あらすじはちょっとややこしいし短く書いてもわけがわからないので各自ググれ。主演は長澤まさみ。ほかに松田龍平、長谷川博己も出ていてこの3人はそれぞれの個性を出していて素晴らしかった。

「人のコミュニケーションの脆弱さ、という怖さ」を描き続けている黒澤清映画の王道ともいえる内容で、普段ぼく達がいかに何も考えずに言葉を扱っているかを思い知らされる。

「愛」とか「友情」によって人はつながっているわけだけど、そんなものは当然幻想であって存在しない。でもそうした幻想が実際にある「かのように」振る舞うことで人は社会をつくる。一番やばいのは愛や友情を失うことよりも、それが幻想であることを直視してしまうことなのだ。

 

3位 : 沈黙-サイレンス-

遠藤周作の「沈黙」をスコセッシが監督。「スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールド、「スター・ウォーズ」EP7以降でカイロレンを演じるアダム・ドライバーのほか、浅野忠信、窪塚洋介も出演している。

金融とテクノロジーが世界を動かす昨今、言ってしまえば「合理性」こそが全ての価値基準を覆っている。つまり合理的なものが良くて、合理的でないものはダメということだ。浅野忠信演じる奉行はキリスト教者に対して滔々と「君は合理的では無い」と説く。これはとても面白くて、アジア人よりも進歩的と思われる当時の西洋人こそが非常に狂信的で、江戸時代の奉行がむしろ理路整然としているという構図が現れてくる。

ただしかし信仰や普遍性とはそもそも非合理で役に立たないのであり、そこに命をかけるからこそ尊いのだ、ということを本作「沈黙」は強く訴える。ぱっと見でコスパが悪かったり整理に落ちないものを全て切って捨てる現代において、こういった映画が観られることの意味は非常に大きい。

スコセッシと言えば景気の良い犯罪映画というイメージなので「なんで沈黙?」と謎だったのだが、町山さんの解説を聞いたら深く納得したしよく分かった。有料だけど大変面白いしたった216円なのでおすすめ → 町山智浩の映画ムダ話42 マーティン・スコセッシ監督『沈黙サイレンス』

 

 

2位 : 美女と野獣

ディズニーアニメ史上でも特にファンが多い91年の「美女と野獣」をエマ・ワトソン主演で実写映画化。ここ数年で「シンデレラ」や「マレフィセント」が実写化されたものの実にどうでも良い内容だった。なので今回も心配していたが、実写版「美女と野獣」に関してはディズニーの歴史にとっても非常に重要なスーパー大傑作だった。ありがとう、ディズニー!!

実写実写と繰り返してはいるが、結論からいうと本作は明らかに実写とアニメの境界を問う作りになっており、さらにそれだけでは無く「実在する役者 = 人間」と「絵やCG = つくりもの」の位置づけが簡単にとって変わってしまうという可能性すら提示していて、AIが人間の仕事を奪うなどという大変下らない議論が交わされる今、非常に大きな射程を備えた批評性の高い映像作品に仕上がっている。

ディズニーの超大作というだけではじめからまともに扱おうとしない人も多いと思うし実際に観ても歌が楽しいだけでだからどうしたというケースも多いんだと思う。ただ「君の名は」とか「シンゴジラ」だけじゃなくてこういうディズニー映画を頭良く分析するライターや批評家があまり出てきてくれないのが映画好きとしてはちょっと寂しい。ヨシキさんは最近やってるよね → 高橋ヨシキ「暗黒ディズニー入門」

 

1位 : IT イット

子供の失踪事件が相次ぐアメリカの田舎町。ビルの弟も姿を消してしまい、悲嘆に暮れる彼の前に突然あらわれたIT = ピエロ。ビルの友達たち(クラスのイケてないグループの「はみだしクラブ」)も、同様にITと遭遇したという。自分を襲う恐怖こそがITの正体だと知ったはみだしクラブは、力を合わせてITに立ち向かうべく結束するが・・といったあらすじ。原作はスティーブン・キング。

ホラー映画は怖い。しかし本当に怖いのは、スクリーンの中の脅威が観ている自分自身にも迫っていることに気づくときだ。その意味で「IT イット」は誰もが感じる恐怖という感情、特に子供らしい純粋さを失うことの恐怖をテーマとした真のホラーといえる。明らかにキングの「IT」を意識した2014年の映画「イット・フォローズ」なんかでもほぼ同じテーマが描かれていて、あれも画面上のバケモノが本当に自分のすぐそばにいるような気がして震えるほど怖い。

人気ドラマの「ストレンジャーシングス」を意識したであろう80年代の田舎演出、映画の肝となるイキイキとした子役たちの演技、テンポの良い編集と爆笑できるギャグシーン。すべての要素が高いレベルで実現されており、観客を楽しませるために本当に知恵を絞っていることが伝わってくる上に、それらがすべて作品のテーマに結実している。アメリカ・日本をはじめ世界中で大ヒットしている映画だけど、それは本当に観た人の心にショックと感動を与えているからだと思う。間違いない!!これが俺の1位だ!!

 

 

おまけ : 今年面白かった映画本

映画評論・入門!

ゲンロンの「現代日本の批評」や、さやわか・ばるぼら両氏による「僕たちのインターネット史」など、コンテンツや社会事象そのものではなくそれをとりまく言説の歴史をまとめた書籍がここ最近で数多く出た。

映画でも同様で、このモルモット吉田の「映画評論・入門!」は映画評論のやり方というよりも、日本における映画評論、映画の語られ方や語られる環境がどのように変遷してきたかを非常に面白く説明してくれる。映画と同じくらい映画批評が好きだ!という人は結構多いと思うけど、そういう人なら面白く読めると思う。

 

暗黒ディズニー入門

博覧強記のサタニスト、高橋ヨシキがまさかのディズニー本。

「暗黒ディズニー」という名前から、変な業界裏話を想像するかもしれないが、全然そんな内容ではない。ディズニーの映画史をアニメーション技術や宗教的な側面から紐解いており、さすがヨシキさん!という今までなかった真正面からのディズニー映画論が展開されている。

特にマットペインティングの話など知らなかった事がたくさん書かれていて面白かった。もっとこういう風に技術・表現論的に映画を、特に商業的な映画を語る人が増えてほしいなあ。

 

ミッキーはなぜ口笛を吹くのか: アニメーションの表現史

イメージの進行形」という映画批評史を転換する傑作を書いた渡邉大輔氏が推薦していたのでいまさらながら読んだ。アニメーション技術に関心がある人なら必読の内容。

アニメを実写映画より低次元なものと考えている人がいまだに多いようだけど、美女と野獣のくだりでも書いたようにそもそも映画とは嘘っぱちのつくりなんだよね。CGの進化によって実写とアニメの境界が怪しくなりつつある今、そうした区分け自体に意味がなくなり始めている。その意味で「美女と野獣」とか「ワンダーウーマン」みたいなあえてCG丸出しにしたゲームみたいな映画が大ヒットしているのがとてもおもしろい。

アニメーションの歴史をたどると自然と映画や映像の本質、ひいては僕達が抱く世界に対するリアリティや人間観にも迫れる可能性がある。だからこそ緻密にアニメーションの成り立ちを記した本書は映画や映像に関心があるすべての人におすすめできる。

 

 

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